モンテッソーリメソッドスポーツ教育

MAME(Montessori Aligne Movement Education)

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Montessori吸収する精神

吸収の精神とは?

モンテッソーリ教育における「吸収の精神(The Absorbent Mind)」とは、誕生からおよそ6歳頃までの子どもが持つ、特別な心の働きのことを指します。これは、子どもが意識的な努力をせずとも、周囲の環境や言語、文化といったすべてを自然に吸収し、自らを形づくっていく力でもあります。

マリア・モンテッソーリは「子どもはスポンジのように環境を吸収する存在である」と述べました。これは単なる比喩ではありません。科学的な観点からも、幼少期の脳は非常に柔軟で、新しい情報や刺激を受け入れる神経回路が活発に働いていることが判っています。この時期に得た経験や印象は、その子の人格形成や学習の土台を築くことになります。

街を歩いている時に何かが香り昔を思い出すことはありませんか?街を歩いていると、ふとした香りに昔の思い出がよみがえることはありませんか?

これは、0歳から6歳までの間に蓄積された記憶が、匂いや感触などの五感をきっかけに思い出される現象です。6歳までの記憶はポジティブなものでもネガティブなものでも全て脳の中に記憶されると言われています。

無意識から意識への移行

吸収の精神は、主に0~3歳の「無意識的吸収」と、3~6歳の「意識的吸収」に分かれます。0〜3歳の子どもは、周囲の音、動き、表情、匂いなどを無意識に取り込みながら、生きるために必要な基本的な機能である言葉、歩行、社会性などを獲得します。赤ちゃんがどんな言語環境に置かれていても、言葉を話せるようになるのは、この無意識の吸収の力によるものです。

3~6歳になると、子どもは自分の周囲にあるものに対して「なぜ?」「どうして?」という意識を持ち始めます。この段階では、吸収する力は依然として強力ですが、子ども自身の興味や選択、意志が徐々に現れてきます。特別な期間とされる「敏感期」もこの頃に重なります。これは、子どもが自ら学びの方向性を決め始める準備段階であり、吸収する力がより深く、確かなものになることを示しています。

敏感期とは、子どもが今自分に必要な学びや行動を本能的に理解し、練習していくよう促す期間のことです。この時期に子どもの「やりたい」という自主的な欲求に応じて活動をさせてあげることは、単に満足感を与えるだけでなく、脳の発達や神経ネットワークの形成、運動機能の洗練、そして「自分はできる」という自己肯定感の土台づくりに大きな影響を与えます。

環境こそが教師

吸収の精神の特徴は、子どもが「教えられる」ことよりも「自ら取り込む」ことで成長する点にあります。したがって、どのような環境に子どもが置かれるかが極めて重要です。モンテッソーリ教育では、「整えられた環境(Prepared Environment)」という概念があり、子どもの自主性、探求心、集中力を引き出すように教具や家具、空間のすべてが設計されています。

子どもは環境の中にある秩序、礼儀、言葉、態度、価値観までも吸収します。大人がどんなに美しい言葉を教えようとしても、日常的に暴言を聞いていれば、子どもはそちらを模倣するでしょう。つまり、子どもは私たちが「教えようとすること」ではなく、「実際に私たちが生きている姿」を吸収するのです。

大人の役割

モンテッソーリ教育では、教師や保護者は「指導者」ではなく「観察者」「ガイド(サポーター)」であるべきだとされます。子どもの吸収の力を信じ、過干渉をしすぎず、必要なときにそっと手を差し伸べる存在です。子どもの中にはすでに成長への衝動と可能性が備わっています。大人がするべきことは、その芽が健やかに伸びるように、環境を整え、模範となることなのです。

また、私たち大人自身が「吸収の対象」であることも忘れてはなりません。私たちのふるまい、声のトーン、感情の扱い方までもが、子どもの内面に深く刻まれていきます。だからこそ、まずは私たち自身が、自分のあり方を見つめ直す必要があります。

子どもと接する際は、「プライベートのコートを教室の外にかけてから入室する」という意識で臨みます。これは、庭や個人の感情・悩み・忙しさといった“プライベートな心の荷物”を一度教室の外に置くことを意味します。子どもたちと向き合う時間は、純粋に子どもたちのために集中する姿勢を大切にしなくてはいけません。なぜなら私たちは環境の一部だからです。

心を整え、ニュートラルな状態で入室することで、子どもたち一人ひとりに丁寧に寄り添える準備が整います。

吸収の精神が教えてくれること

モンテッソーリ教育が大切にする「吸収の精神」は、子どもが持つ力を最大限に生かすと同時に、大人に深い責任と希望を示しています。この貴重な時期に、どんな環境を与え、どんな関係性を築くかが、その子の人生に影響を与えます。子どもたちは何をすればいいのか、実は全てわかっているのです。私たちはその子供たちの成長のガイドです。花に水や肥料、光をあげすぎると枯れてしまうように、私たちが花の様子を見ながら何が今必要で何を与えるといいのかを見極める必要があります。

執筆 モンテッソーリスポーツジャパン代表 澤 彩夏